ジュエリー用語集
ロストワックス(キャスト)/lost wax
ロストワックス(lost wax)とは、蝋(ワックス)で原型を作り、その周囲を石膏で固めたあとワックスを焼き溶かして空洞を作り、そこへ溶かした金属を流し込むことで金属製品を成形する技法です。正式には「ロストワックス鋳造」または「ロストワックスキャスティング」と呼び、ジュエリー業界では「キャスト(cast)」と略され、「キャストに出す(鋳造業者に依頼する)」のように使われます。なお「ワックス」はあくまで鋳造前に作る原型(ワックスモデル)を指す言葉で、鋳造工程そのものとは区別されます。「失われた(lost)蝋(wax)」という名称は、ワックスが焼き溶かされて消える工程に由来します。
歴史
ロストワックス技法の起源は古く、紀元前2500年頃のメソポタミアや古代エジプトの金属工芸にまで遡るとされています。現代のジュエリー製作においても基本的な工程は変わらず受け継がれており、世界中のジュエリーメーカーで広く用いられています。
ロストワックスの工程
- ワックス原型の制作:専用のジュエリーワックスを彫刻・成形して指輪などの原型を作ります。職人が手で彫るほか、CAD/CAMで設計したデータをもとにワックスを切削する方法も広く使われます。
- 湯道の取り付け:ワックス原型に金属を流し込む「湯道(スプルー)」となるワックスの棒を取り付けます。複数の原型を一本のツリーにまとめることで、まとめて鋳造できます。
- 埋没(石膏型の作成):ワックスツリーをフラスコ(金属製の筒)に入れ、石膏(埋没材)を流し込んで固化させます。
- ワックスの焼失:石膏型を高温(通常700〜900℃程度)で焼成し、内部のワックスを完全に溶かし出します。これによってワックスの形そのままの空洞が石膏内に生まれます。
- 金属の鋳込み:溶かした貴金属(プラチナ・ゴールドなど)を、遠心力または真空を利用して石膏型の空洞に流し込みます。
- 型の除去・仕上げ:冷却後に石膏を水に浸けて溶かし除去します。その後、スプルーを切断し、研磨・仕上げを行って完成させます。
手彫りワックスとCAD/CAMワックス
ワックス原型の制作方法には大きく分けて2種類あります。
- 手彫りワックス:職人が専用のワックスをカービングナイフ・ハンドピースなどの工具で手作業で彫って成形する方法。職人の技術と感性が直接反映され、手仕事ならではのやわらかい曲線や温かみが生まれます。
- CAD/CAMワックス(ミリング):コンピューターで設計した3Dデータをもとに、切削機(ミリング機)でワックスブロックを削り出す方法。設計通りの精密な形状が安定して得られ、複雑なデザインにも対応しやすいです。
なお、3Dプリンターでワックス(またはワックス系の樹脂)を造形する方法も普及しており、これもロストワックス鋳造の前工程として使われています。
鍛造との違い
ロストワックス鋳造は複雑な形状を再現しやすい一方、金属を溶かして固化させるため、圧力で金属を鍛える鍛造と比べると強度がやや劣る面があります。デザインの自由度と量産性は鋳造が優れており、強度・耐久性は鍛造が優れているため、ジュエリーの用途やデザインによって使い分けられています。


